ホウ素中性子捕捉療法

Yoshinori Hayakawa Laboratory

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臨床工学科

早川吉則

 

 

桐蔭横浜大学 臨床工学科  早川研究室

2005年4月1日以来 の訪問者

    原子炉治療は癌のある場所がはっきりしない神経膠腫という癌に有効です。神経膠腫は脳腫瘍の一種で脳腫瘍の約半数が神経膠腫です。神経膠腫では腫瘍の細胞が神経に沿って細い枝を出すため、腫瘍の存在する範囲が限定できません。特殊なホウ素の化合物を投与すると神経膠腫の細胞にだけ取り込まれます。そこに原子炉からの遅い中性子を照射すれば、中性子は他の組織には余り害を与えず、神経膠腫だけを死滅させます。これはホウ素が照射された中性子を捕まえて、α線という破壊力が強く、少ししか飛ばない放射線を出す性質をもつためです。神経膠腫は原子炉による治療以外では殆ど助かりません(小児の場合原子炉治療でなくても助かることがあります)。遅い中性子(熱中性子)は組織を2cm通過すると強度が半分に弱まる(水素の原子核に熱中性子がつかまるため)ので、腫瘍に中性子が到達するよう、頭皮・頭蓋骨・腫瘍をできるだけ取り去り、その孔に髄液や血液が溜まらないようにピンポン玉を挿入して中性子を照射していました。故畠中坦帝京大学医学部教授の治療成績でも深い脳腫瘍の治療成績が劣るのはこのためと思われます(故畠中坦教授は原子炉での照射時間についってはいつも頭を悩まされていました。これは熱中性子が水素の原子核に捕まった時に出す2.2MeVのガンマ線が脳表面から約2cmの所に大きな線量を与え、脳に無差別に損傷を与えるためで、熱中性子を20,000,000,000,000 n/(cm*cm)以上照射した患者さんでは長期生存例がないと苦にしておられました)。最近は熱中性子より少しエネルギーが高く、組織での透過力も若干たかい熱外中性子(エピサーマル中性子)を照射することが多くなりました。この場合手術は必要でなくなります。日本での成功に刺激されて、現在日本以外にアメリカ(マサチューセッツ工科大学、ブルックヘブン国立研究所)、ヨーロッパ共同体(オランダのペッテンの原子炉で照射)、フィンランド、チェコで実験的治療が行われています。原子炉を用いず加速器を用いる方法も研究されていますが現在のところ中性子の強度が足りません。脳腫瘍以外に悪性黒色腫(メラノーマ)の治療にも使われています。

 図1 脳腫瘍(神経膠腫:神経膠とは神経細胞をにかわ(膠)のようにつなげている細胞・この癌化したものが神経膠腫)は神経に沿って枝を出すので、どこからどこまでが腫瘍なのかはっきりしない。ホウ素にはホウ素10とホウ素11がある。ホウ素10はホウ素11より中性子が一個たりないので遅い中性子を良く捕まえる。ホウ素10が遅い中性子を捕まえてα線を出す。ホウ素の化合物は腫瘍細胞にしか取り込まれない。α線は破壊力が強く少ししか飛ばない(約10ミクロン)

図2 原子炉での照射状況の断面図(武蔵工業大学原子炉研究所トリガー2型原子炉)

図3 原子炉による遅い中性子の照射の概念図

図4 施療室で手術中の患者さん(日本原子力研究所東海研究所2号炉)。

図5 施療室で手術が終わり照射施設に搬入する寸前の患者さんの頭部 (日本原子力研究所東海研究所2号炉)

図6 患者さんの照射現場への搬入(日本原子力研究所東海研究所2号炉)

図7 原子炉で照射位置を合わせているところ(日本原子力研究所東海研究所2号炉)。

図8 原子炉で照射直前の患者さん(日本原子力研究所東海研究所2号炉)。

図9 原子炉治療を終わって快復し退院直前の脳腫瘍の患者さん(向かって左が故畠中坦帝京大学医学部教授)

図10 原子炉治療前の脳腫瘍の患者さんの脳のCT像(故畠中坦教授撮影)

図11 原子炉治療後10年を経た元患者さんの脳のCT像(故畠中坦教授撮影)

図12 原子炉治療後10年をへた脳腫瘍の元患者さん(故畠中坦教授撮影)

図13 原子炉治療後20年を経た別の脳腫瘍の元患者さん(故畠中坦教授撮影)

図14 日経サイエンス 1990年12月号 66-72頁「ガンの選択的放射線治療BNCT」 RFバース・AHソロウェイ・RGフェアチャイルドによる故畠中坦教授の脳腫瘍(神経膠腫)の原子炉治療の治療成績

図15 中性子同時モニター(早川・原沢 他 開発)半導体検出器の表面に塗ったホウ素が中性子を捕まえて α線を出し、これが半導体検出器で検出される。

図16 改良型中性子同時モニターの断面図(原沢・早川 他 開発)    ホウ素のかわりに中性子を捕まえてα線をだすリチウム-6を用いている。    α線のエネルギーがホウ素のものより大きいため信号が強くなった。

図17 同時モニターの応用

図18 同時モニターを消毒中の早川吉則講師(当時):今日も一人患者さんを助けてしまうのだ!

 

中性子捕捉療法−現状と将来−

 早川吉則 (筑波大学基礎医学系:1994年当時)

1 はじめに

  硼素中性子捕捉療法を世界で初めて成功させた帝京大学脳神経外科の畠中坦教授が脳出血のため本年5月(1994年5月)に昇天された。62歳の若さであった。畠中教授の業績を中心とし、中性子捕捉療法につき概観する。この療法は脳腫瘍に関して、他のどの方法よりも優れた治療成績を上げている。筆者は1976年以来畠中教授に協力し、原子炉で照射中の患者頭部での中性子強度の同時モニターの開発とその臨床応用を行い、照射時間決定のためのデーターを提供してきた。

2 硼素中性子捕捉療法の原理

 本治療法は低速中性子を捕獲してアルファー線を出す硼素−10の薬物BSHを血液中に注入した後、低速中性子を照射するものである。正常脳には薬物の取り込みがない(毛細血管内の血液中の硼素は例外・このため毛細血管がアルファー線により傷つく)一方で脳腫瘍には薬物が取り込まれるため、腫瘍だけを選択的に破壊できるという原理を用いている(アルファー線の組織透過力はわずか9ミクロンで、はぼ細胞の大きさに等しい)。図に脳腫瘍の患者の原子炉からの低速中性子による照射の状況を示す。

3 中性子捕捉療法の沿革

 世界で初めて硼素中性子捕捉療法(原子炉治療)が行われたのは1951年で、マサチューセッツ総合病院のW.H.Sweet教授を中心とする医学、物理学、化学者らであった。しかし短期間に脳腫瘍患者が全滅したので1961年には中止した。一方1964年にマサチューセッツ総合病院へ留学した畠中坦教授(当時東大助手)はこの療法をさらに研究し、1968年に日本で初めての原子炉治療を行った。照射野を広くとる(低速中性子がより深くまで到達するようになり、また遠くまで枝を延ばしている脳腫瘍の浸潤を照射出来るようになる)・硼素の薬物BSHを注入する時間を照射直前ではなく約12〜24時間前とする(腫瘍中の硼素濃度は注入直後に比べて低くなるが、血液中の硼素濃度はさらに低くなる)などの改良を重ね、現在約130例の脳腫瘍患者を治療し、最長生存者は21年を越して元気である。脳表面にある神経膠腫を発見後2週間以内に硼素中性子捕捉療法で治療すれば5年生存率50%を期待しうる。この成績に達するまでに、脳外科学だけでなく、麻酔科学・放射線科学・薬学・炉物理学・医学物理学などの多方面にわたる研究者の協力があったことも見逃せない。米国で失敗の経験があるだけに、医学界では、長らく半信半疑であったようだが、外国人を治療しても良く効いている、CTの発展などにより病状が客観的に把握できるようになった等の結果、国際的に認められた。このため1983年にボストンで第1回の国際シンポジウムが持たれ、第2回が東京、第3回がブレーメン、第4回がシドニーで行われ、第5回のコロンバスに続き、1994年11月には第6回が神戸で行われる。一方中性子捕捉治療を行うグループや対象疾患も増えている。国立療養所香川小児病院の中川義信先生のグループ、京都大学のグループ、京都府立大学のグループが脳腫瘍の治療を行っている。また筆者の所属する筑波大学の脳外科も治療のための基礎実験を開始している。神戸大学の三島豊名誉教授のグループは皮膚の悪性黒色腫の治療を約5年前から行っている。また米国でも本年9月に入ってブルックヘブン国立研究所で脳腫瘍の硼素中性子捕捉療法が、マサチューセッツ工科大学で悪性黒色腫の硼素中性子捕捉療法が行われている。オランダ、オースラリアなどでも治療のための原子炉の改装が行われている。

4 中性子捕捉療法の研究課題

 中性子捕捉療法は中性子源(従来は原子炉からの熱中性子のみ)、薬物(従来は硼素化合物のBSHのみ)、照射する線量の3つが特に大切である。中性子捕捉療法の将来に向けての研究はこの3つに向けられている。  中性子源では熱中性子より深部 到達力の強いエピ・サーマル中性子源が熱心に研究されている。エピ・サーマル 中性子を得るための原子炉の改装、陽子線加速器を用いた中性子源(2 MeV程度 の陽子線をリチウムに照射して中性子を得る)、光核反応を用いたアンチモン ・ベリリウム源(30keV)などがある。現在まで治療に必要な中性子強度 (100,000,000 n/(cm*cm*s) 程度)に達しているのは原子炉の改装だけである。   薬物ではBSH以外の硼素化合物の研究が盛んであるが(例えばポルフィ リン誘導体)、この他にガドリニウム化合物(中性子を捕まえてガンマ線を出す )も研究されている。ただしガドリニウムから出るガンマ線は遠くまで到達する ので逆に局所の線量が不足し、脳腫瘍の治療には硼素化合物を併用が必要と思わ れる。   線量については腫瘍内の薬物濃度と到達する中性子強度の2つが必 要である。薬物濃度は現在使用中の硼素について中性子照射開始直前に手術で 取りだした腫瘍(の一部)に熱中性子を照射してアルファ線放出直後に放出さ れるガンマ線強度を測定する方法が実用化されている。これを照射中の患者に 応用する方法や、MRI(核磁気共鳴画像)を用いて予め測定して置く方法な どが研究中である。硼素化合物の場合、アルファ線の飛程が短いので細胞内で 核(DNA)の近くに分布するほど同じ線量でも効果が大きい。このため細胞 内硼素濃度の分布測定の研究が進みつつある。中性子強度については、著者ら の開発した半導体検出器にリチウム−6(中性子を捕獲してアルファ線をだす) を塗布した中性子同時モニターが現在使用されている。ただしこれでは検出器 のある点だけの中性子強度しか分からないので、中性子強度の分布を計算する コンピューター・プログラムが主として米国で開発されている(特にエピ・サ ーマル中性子について)。またパルス状エピ・サーマル中性子源による音響パ ルス発生を検出することによる線量分布のモニター法が著者らにより提案され ている。      

日本アイソトープ協会 Isotope News 1994年11月号 に掲載 (自由空間:28-29頁)

 

 

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